奪取―[Berry's版]
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 からりと晴れた土曜日。午前中の勤務を終えた絹江は、将治の店まで降りてきていた。
 待ってましたと言わんばかりに。絹江を出迎えた将治は、現れた彼女をゆっくりと上から下までを眺めてゆく。その様はまるで、何かを検分しているかのようだ。
 本日の絹江は、淡い若草色のちりめんの着物を着ていた。小さな蝶が描かれたものだ。将治の態度に訝しさを感じながら、絹江は問う。

「で、私はどこへ付き合えばいいのかしら」
「絹江さん。残念だけれど、その格好じゃ困るんだよね。今日は」
「は?」

 将治の言葉に、絹江は首を傾げたのだった。
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