奪取―[Berry's版]
「春花さんが考えるだろう障害を、少なくしておきたかったんです。親しいプロデューサーやらスポンサーは、既に僕の味方ですよ」
「とりあえず、承知しただけだからね」
「それでもいいですよ。でも、春花さん。僕を逃すと、後悔しますよ。貴方を、ずっと恋焦がれさせる自信が、僕にはありますから」

 忌々しいほど、自信を見せる青年を前に、春花からは声を上げるほどの笑みが零れていた。

 ※※※※※※

「若いって凄い」

 突然起こった余興の興奮から、会場は未だに冷めていなかった。それは絹江も同様で。既に無人となったステージを見つめたままの絹江の口からは、その言葉が零れる。小さく息を漏らし、将治は苦笑を浮かべた。瞬時に反応した絹江は、彼へ視線を向ける。

< 238 / 253 >

この作品をシェア

pagetop