奪取―[Berry's版]
祖母が勧めてきたお見合い相手としてではなく、あくまでも。大学時代から付き合いのある、気心の知れた旧友。
喜多には、そうであった欲しかったのだ。
喜多の住む部屋の前まで辿りついた絹江は、腰の高さのにあるゲートを通る。ドアの横にあるインターフォンを押し鳴らした。現れた喜多は、ネクタイを少し緩めただけの様で。まだしっかりと、スーツを着込んでいる。どうやら、彼は帰宅したばかりのようだ。
身体を使って大きくドアを開き、喜多は笑顔で絹江を部屋へ招き入れる。絹江も笑みを返し、彼の前を通り過ぎようとした。瞬間、柑橘系の香りが鼻を掠める。思わず、足を止めて。絹江は喜多の顔を見上げた。
喜多には、そうであった欲しかったのだ。
喜多の住む部屋の前まで辿りついた絹江は、腰の高さのにあるゲートを通る。ドアの横にあるインターフォンを押し鳴らした。現れた喜多は、ネクタイを少し緩めただけの様で。まだしっかりと、スーツを着込んでいる。どうやら、彼は帰宅したばかりのようだ。
身体を使って大きくドアを開き、喜多は笑顔で絹江を部屋へ招き入れる。絹江も笑みを返し、彼の前を通り過ぎようとした。瞬間、柑橘系の香りが鼻を掠める。思わず、足を止めて。絹江は喜多の顔を見上げた。