奪取―[Berry's版]
「来てもらって早々申し訳ないんだけれど。俺も帰ってきたばかりで。ちょっと汗を流して来たいんだ。待ってってもらっても良いかな?」
「うん、私は大丈夫だけれど。……日を改めたほうが良かった?」
「いや。直ぐだから、待ってて。悪いね」

 席を立とうとする絹江を押し留め、喜多は浴室があるベッドルームの奥へと姿を消した。
 彼の背中を見送り、絹江は大きく息を吐き、ソファーに背を預ける。先ほど生じた胸に疼く何かを、絹江は紅茶と共に飲み込む。ひとくち、ふたくちと。カップ半分ほど流し込んだころ。漸く、気持ちが落ち着いてきたのを自覚し、絹江は視線を部屋へ向けた。すると、壁に掛けられている白大島が視界に入る。先日、絹江が置いていった白大島だ。
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