奪取―[Berry's版]
 先ほどとは違い、大学生時代を彷彿させる喜多の姿を前に。絹江の頬が緩む。眸を細める絹江に、喜多が口を開いた。

「さっぱりした。待っててくれてありがとう。……何?面白いものでもあった?」
「ううん。喜多くんて、昔と変わらず細身だな、と思って」
「そう?確かに、体型には気を遣っているけれどね。でも、大学時代から運動は続けていたから、筋肉はあるよ。ぱっと見分かるほどの筋肉隆々にするつもりはないけれど。ある程度はね」
「そうなの?」
「一時期流行っただろう?細マッチョ?だっけ」
「うん……」

 喜多の答えを聞き、絹江は思わず手を伸ばした。喜多の胸元へ。着地したところから、指先を少しずつずらして。薄いシャツ越しに分かる、喜多の筋肉の隆起を。絹江は感じていた。

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