奪取―[Berry's版]
「――本当だ。触るとわかる」
「きぬちゃん……」

 自身を呼ぶ声に、絹江は弾かれたように顔を上げた。呆れたように、片眉を上げる喜多と、視線がぶつかる。

「触り方が、エロイ。非常に」

 一瞬で、絹江の顔は紅く染まる。発熱してしまったように。弾かれたように、離れていった絹江の指先を名残惜しくも思いながら。喜多は楽しげに声を上げて笑っていた。


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