奪取―[Berry's版]
 結局。その後、絹江は誰とも付き合うことも、身体の関係を持つこともなく。今日までを過ごしてきた。プロセスに費やす時間があるならば、その他の有意義な時間に当てたい。絹江の選択した道はそれだった。

 一時期、ドラマで話題になった『セカンドヴァージン』。そこに定義があるのか、絹江は詳しく知らないが。恐らく、自分はそれに当てはまるのだろうと、自覚していた。それほどまでに、異性との肌の触れ合いにはご無沙汰なのである。

 待ち合わせのラウンジに、絹江は一人座っていた。ある程度の年齢に達している者同士のお見合いである。立会い人は要らないと祖母には伝えてあった。釣書に関しても、絹江は目を通していなかった。失礼なのは承知であるが、正直興味が持てなかったからだ。お断りしようと、心ではもう決めている。どんな相手がこようとも、だ。
< 8 / 253 >

この作品をシェア

pagetop