奪取―[Berry's版]
 齢75を過ぎているはずなのだが、いつ見ても祖父は若かった。いや、若作りをしていると表現した方が正しいのかもしれない。
 肩まで伸びた真っ白な髪を一本に結わえ、濃い色の入った眼鏡をかけ。恐らく、今着用している服は、喜多と同じ年である従兄弟から借りたものだろう。たぼついたダメージジーンズに、色鮮やかなパーカーを合わせていた。いつものことであるので、その姿を前にしても。喜多が驚くことはない。
 今まで読んでいたのだろう、祖父は本を開いたままにカウンターへ置く。

「どうした、喜多」
 
 祖父に問われても、喜多は口を噤んだままに。小上がりに腰を掛けた。カウンターの奥には、小さな和室があった。今は障子で閉ざされ、中の様子は伺えないが。時折、祖父が身体を休めるようにと用意した部屋であった。
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