奪取―[Berry's版]

 語気がやや荒くなる喜多に、祖父は眸を細めた。

「その子は、今、お前なんて眼中にないんだ。目標に向かって進むことに夢中なんだ。喜多、本当はお前も分かっているのだろう?自分では何も出来ず、他人の力を借りて目の前に現れた男に、そんな女が靡くとでも思うのか?」
「……」
「時期が来る、必ず。ふたりが運命の相手なら……いや、運命の相手ではなかったとしても。自分が求めた女くらい、自分の手で引き寄せて見ろ、俺の孫ならな」

 楽しげに、笑みを浮かべる祖父を前に。喜多は情けなくも感じながら、天井を見上げていた。

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