善いヴィッチ
「つかオッサン何も食べてないじゃん、お腹空かないの?」

田中が不思議そうに顔を見る。

「昼飯を我慢すれば、薄い本が一冊買えるのだよ」

フフンと鼻で笑う俺。

注)ここで言う薄い本とは、同人誌の事を指す。

「よし、ちょっとやる!」

田中は自分の食べているチリドッグを差し出した。

「私だけ食べてたら、気の利かない人だと思われるでしょ?」

とはいえ。

「……」

受け取ったチリドッグを見つめながら、四十のオッサン考える。

コイツ間接キスとか気にならないタイプかこの場合どこから口を付ければいいのか田中が食った跡の真逆だと意識し過ぎていると思われかねない食った跡直撃コースだと何コイツきもいと思われかねないさてどうするどうする。

年甲斐もなく純情な事で悩む四十。

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