吸血鬼は淫らな舞台を見る

 
 血で染まった絨毯が事件の凄惨さを物語っていた。


 マイケル・サトウ警部補は血を避けながら現場となったリビングに足を踏み入れ、一瞥すると眉間に深い皺を寄せた。


 錆臭いニオイが部屋に充満して居心地は最悪。


 ビール瓶が割れて破片が散乱し、真新しいベージュの壁紙には大量の血がへばりついていた。


 狂った絵描が自らの駄作に嫌気が差して赤い絵の具でぶちまいたように一種の芸術作品に仕上げている。


 血を流していた被害者が救急車で運ばれたとき、まだ脈はあったらしい。


 被害者は頭と背中に銃弾を受け、いずれも貫通射創で至近距離から発砲されたもの。


 
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