吸血鬼は淫らな舞台を見る


 瑠諏はタクシーを呼んで病院から離れた。


 サトウは送ってくれると言ってくれたがお断りした。


「私の棲家に来てどうする気なんです?」

 悪戯っぽい目付きで尋ねると、サトウは苦笑いをして病院の出入口で瑠諏を見送り「自宅でしばらく安静にしていろよ」と言葉をかけた。


 自分の棲家に帰るとき、瑠諏は左腕の袖を捲る。


 腕時計を見るためではなく、左の手首には刺青のように住所がペイントしてある。


 特殊能力の影響なのか、自分の住んでいる住所を忘れてしまうときがあるからだ。
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