吸血鬼は淫らな舞台を見る


 車へと帰ってきたジョン・ドゥは不機嫌そのものだった。


「あら、今日は時間がかかったわね」

 ジョン・ドゥの心境などおかまいなしに声をかけたのは後部座席に身を沈めるように座っていた女。

 歳は40くらいでゆっくりと瞼を開けた。


「寝てたのか?」

 隣に座ってきたジョン・ドゥが正面を向いたまま尋ねる。


「悪い?」

 女は眠たげな視線を向ける。


 ドン、と車が揺れた。
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