吸血鬼は淫らな舞台を見る


「ねぇ、あの女の吸血鬼が坊やのところにいたのかくらい教えてよ」

 手っ取り早く片付けてくると剣未に言われ、我慢して待っていた篠田レミが運転席にいる屈強な男に不平をもらす。


 直後にドーンという重い爆音。


 爆風で飛んできた建物のコンクリート片が当たり、車のフロントガラスがヒビ割れて蜘蛛の巣状に広がった。


 篠田レミは慌てて車から飛び出す。


 それより先に出ていたのは屈強な男。

 視界ゼロの白い煙の中、突進していく。


 根こそぎもぎ取られた街路樹が、路上駐車していた車のドアを破壊して防犯対策用のけたたましい警告音を鳴らしていた。
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