吸血鬼は淫らな舞台を見る
病院の裏口に回転灯の明滅をやめた救急車が停まっていた。
診療時間はとっくに過ぎていたのでER(救急室)を除き、病院は静まりかえっていた。
被害者の両親は寄り添い、肩を落として長椅子に座っている。
廊下を挟んだ処置室には白いシーツを全身にかけられた息子の遺体がストレッチャーにのせられていた。
すでに霊安室に運ばれていると思っていたサトウは両親がまだ息子の死を受け入れられず、病院側が配慮して処置室に置いたままなのだろうと推測した。
気を遣って2人だけにしているのか看護師たちの姿はない。