吸血鬼は淫らな舞台を見る


 2人は立ち上がり、丁寧に頭を下げて再び顔を上げたとき、父親の武の視線はサトウの後ろへ注がれた。


 全身黒ずくめの男に釘付けだ。


「彼は吸血鬼なのか?」

 武の尋ね方には不信感が滲んでいる。


“私は吸血鬼です!”という瑠諏のわかりやすい格好はさっそく捜査に悪影響を及ぼした。


「ええ、彼はアドバイザーの瑠諏といいます」

 答えにくそうにサトウは苦笑いした。


「吸血鬼が捜査協力を……すごい時代になったものだ」


「必然的な時代の流れです」

 瑠諏の余計なひと言は早苗から泣き顔を消し、武の表情を硬くさせた。
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