吸血鬼は淫らな舞台を見る


 サトウから指示されるより前に原田が応援を呼んだ。


 制服警官に両脇を固められ、武が連れていかれる。


 一度だけ振り返って妻の早苗と視線を合わせた。


“すまない”と謝っている声がサトウには聞こえた。


 早苗が後を追っていく。


「それでは、私もここで失礼します」

 瑠諏が頭を下げて別れを告げる。


「ちょっと待て!背後に回って脅すより、さっさと取り押さえるか銃を奪えばよかったんじゃないのか?」


「自首するチャンスをあげたんですよ」
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