吸血鬼は淫らな舞台を見る


 奥に黒いモノが蠢いていた。


 その方向に石を投げるとハエが四方八方に逃げていく。

 
 影でハエがたかっていたモノがよく見えない。


 風が吹き、雲が流れ、陽がさした。


 ハエが隠していたモノの正体を見たとき、宮川国男は顔を背けた。


 小屋に若い女性の死体が発見されてすぐに駆けつけたサトウは異常な犯人の心理に目を疑った。


 首筋の頚動脈、手首の動脈、そして腕の上腕動脈が鋭利な刃物で深く切り込まれ、おびただしい量の血が辺りを赤く染めていた。


 出血多量による失血死。


 
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