あの頃…
塔矢の後ろに続くしるふの姿に、こちらも満足そうに小さな笑みを見せる

その笑みが少し面白がっているように見えるのは、そもそもの性状のせいだ

「集まったな」

その言葉が合図だったように、海斗が向き合っていたホワイトボードから視線を外す

状況が読み込めなくて見上げるのは、15センチほど上

一瞬瞳が交わったような気がした

「これからの予定を確認すると、今日検査入院で午前中にはご家族と一緒に患者が来る。検査結果は明日中には出ると思うけど」

でも、視線はすぐに塔矢に移ってしまう

「検査中ご家族と話をすることになってたな」

口を開いたのは海斗だ

「ああ。部屋は押さえてる」

「あの。話がまったく見えないんですが」

おずおずと全員の顔を見回す

「なんだ。ここに来るまでに説明してなかったのか」

「黒崎直々のお呼び、としか」

なんだそれ、そう言ってからしるふに視線を投げる

「前に黒崎病院で手術した患者の再手術が決まった」

そう言いながら手渡されるのは数年前のカルテ
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