あの頃…
次のところでうまくやっているかなんてきっと愚問で

そんなことを心配する暇のなさが反って今の自分には有りがたい

傍にいない存在にまで振り回されるつもりはないのだから

そう思う時点で十分振り回されているのだと

冷静な自分がつぶやく

そんなことわかっている

そう思いながら椅子を引く

「あ、そうだ黒崎先生。さっき黒崎君から黒崎先生宛にファックスが届いたわよ」

そこ、と指さされた先のコピー機

怪訝に思いながら放置された紙を取り出してめくる

「少しの間借りたいんだけどとか言われたからその代わり飛び切り優秀なの二人用意しておいてって返しておいたわ」

それ位してもらわないと海斗は貸せない

いくらそれが同期で戦友で、この病院の医院長であっても

「3月って忙しいんですよね」

異動やら新入社員の指導やら

「行くの」

短い問いに視線を移す

「行かないと、いけないですね」

これは

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