あの頃…
「立花は」

「質問に質問で返さないで下さいよ」

そういいながら海斗の手から紙を引く抜く

「うーん。気分的に和食かなあ」

「じゃあ、そこで」

そういってさっさと運転席のドアを開けて滑り込む

どうすればいいか、迷っていると呆れたように窓が開く

「何してる」

さっさと乗れ

「えっと」

どこに乗ればいいですか、なんて聞けない

だからと言って助手席に乗っていい関係か

「ナビするの立花だからな」

まるでしるふの困惑を知っているかのように海斗が告げる

「え、黒崎先生の車ナビついてないんですか」

それはそれで驚きのような気がしないでもないんですけど

「今壊れてるんだよ」

タイミングがいいのか、悪いのかついこの間タッチパネルが動かなくなった

「よくここまでたどり着きましたね」

「いいから早く乗れって」

海斗に言われて慌てて助手席側に回る

乗り込めば、かすかに香るシトラスの香り

香水、ではなく運転席と助手席の間のダッシュポットからのようだ
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