あの頃…
呼ばれて振り向いた海斗

しるふが無言で右手を突き出すのは次の瞬間

そっと小さく息をつきながら戻ってくると突き出された小さな手に自らのそれを絡めれば

すぐに満足げな笑みを見せる

「だいたいね、連絡無精で有名な海斗から電話があっても次の日は快晴だったのよ。仮に私が遅刻まで、数少ない遅刻しない日が今日だったとしても槍なんて降らないわよ」

「ごもっとも」

最近、やっと自分はあまり連絡を取らないと自覚し始めた海斗である

「ここに来るまでね、この4年間のことを思い出してたんだ」

医者になって、海斗に出会って、しごかれて、気が付いたら恋に落ちていて

あのちょうど3年前の春の日

「ああ」

4年前

「ちょっと海斗。その何もかも諦めたような遠い目をしないでくれる?」

「いや、いろいろあったなと」

忘れるわけがない

不覚にもこんな小さな存在に、それまで嫌気がさしていた日々を変えられるなんて

振り回される日々が来るなんて

まさか未だに振り回されているなんて

遠い目をしないでいられようか

あの海辺で穏やかな風を感じて、そして一緒に歩き始めた日

それまでの研修医と指導医という関係ではなく

恋人という関係で

それから3年

あっという間に過ぎた時間はそれでも大切な想い出だ
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