あの頃…
というわけで、彼、名を黒崎海斗

個人総合病院としては最大級のそして最強級の医療を誇る黒崎病院の跡取り息子

よってくる女の数は計り知れないが、一度だってなびいたことのない鉄壁の男

嫌いなものは女と医療界

苦手なものは甘いもの

付け加えるならば、好きなものは平凡とそしてあの真っ白な姫君

なんて言ったら「認識が180度ずれている」なんて言われそうだが

そんな春のある日

彼の憂鬱はいつでも降ってわいたように転がっているものだ


ふらりとIcuに向かうため医局を出た彼の白衣は七分ほどにまくられていて

すらりと覗く筋肉が好きだから年中腕まくりをしていてほしいなんて

いくら彼女であるあの花でも、寒がりの海斗には頼めやしない

ふと漆黒の瞳が3番外来の扉から出てきた30代位のサラリーマンの背を捕える

その軽い足取りと緩みきった口元に無意識に瞳が細まる

何か恒例の、できれば当たってほしくない予感が、した

「橋本さーん、3番診察室どうぞー」

こちらは飯田莉彩

はっきりとした物言いが印象的な看護師

海斗にとって良き友人であり、あの花を任せられる人物である

「飯田」

頭上から降ってきた低い声

振り返れば見下ろしてくる漆黒の瞳
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