赤い結い紐
「ジンさん、お味噌汁ならあるけど飲む?」

千華が気を利かせて訊いてみた。

「おっ、なら、お言葉に甘えちゃおうかな」

うれしそうに笑ってジンが言うと、

「はいはい、じゃあ温めなおすからちょっと待っててね」

母親のように言って、千華が席を立つ。

「武も飲む?」

「ああ、じゃあ貰おうかな」

「うん、レイラさんは?」

「あたしはいーよ」

目玉焼きの半熟に仕上がった黄身の部分をフォークの先でつついて、じっと見つめながらレイラが言った。

穴の開いた部分から、染み出すようにドロッとした黄身が少しずつ流れ出す。

レイラは満足げにその様を見つめ、軽く唇を歪めて微笑んだ。


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