Bloom ─ブルーム─
ずっとどんよりしていた灰色の空から、ポツポツと雫がこぼれ始めた。

今朝見た天気予報では降水確率50%となっていたから、一か八かで傘を持たずに来たんだけど。

降っちゃったなぁと、ガラス越しの雨を眺める。

どんより天気が、気持ちと重なってさらにどんより重く見えた。

もう何度目かわからないくらい見上げた電光掲示板をもう一度見上げる。


8月2日金曜日 16:03 天候 雨 気温 24度


今日は約束のライブの日。

お互いに別々のバスに乗って来れる最寄りの地下鉄駅のベンチで、3時に待ち合わせたはずなのに。

約束の時間を過ぎても、大樹先輩の姿はどこにも見えなかった。

電話しようかとも思ったけど、バスに乗ってるとこかもしれないし。

でも、高鳴る胸を抑えながら大樹先輩が降りるはずのバス停を見つめ続け、先輩のいないバスを3台見送った時に、ちょっと諦めかけた。

余裕持って待ち合わせたから、ライブに遅刻ってことはないんだけど。

もしかしたら来ないんじゃないかって。

そして、この雨。

気持ちを沈ませるには十分だ。

でも、そのお陰で、緊張しすぎてた気持ちもだいぶ落ち着いていた。


プルルルッ……

突然ポケットから聞こえ始めた着信音が、半分固まりかけていた私の体を、ピクンと揺り動かす。

けれど、大樹先輩?という期待も虚しく。

取り出した携帯の画面には、番号のみが記されている。
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