Bloom ─ブルーム─
それで、友里亜が一目惚れした人とは別のお化けさんに保健室まで運ばれた始末。

けど、白塗りののっぺらぼうに抱えられる事の有り得なさったらない。

思い出しただけで恥ずかしいやら恐ろしいやら。

「ね、里花(リカ)、もう少しよく見えるとこないかな?」

友里亜が背伸びしながら私に聞く。

「んー」

確かにここじゃ遠すぎる。

「よし!」

私は友里亜の手を掴むと、人混みの中を縫うように歩き、結構なベストポジションを確保して足を止めた。

ステージを見上げると、ベースの彼の顔がよく見える。

「勇(イサム)ー!!」と呼ばれたその彼は、ベースを弾きながら声のする方に視線を向ける。

そして、鼻までかかる前髪の隙間からニヤッと不敵な笑みを浮かべた。

確かに魅力的かも。

カッコいいだけじゃなくて、空気感というか、オーラというか、フェロモンというか。

顔の造りだけじゃない美しさと色気を持ってる。

フツーなら、こんな有名人でカッコいい人に一目惚れしたなんて言われても「無理無理」って笑い飛ばすとこだけど。

友里亜にはそれは通用しない。

だって、ベースの彼に負けないくらい友里亜のモテオーラもハンパないから。

目を輝かせてステージを見上げる友里亜を私は見つめてた。

キレイ。

誰がどこからみても美人極まりなくて。

肩下でくるんと上手に巻かれた髪はすごく似合ってるし、色白のキメ細かな肌はまさに白魚。

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