弁護士先生と恋する事務員


「何ぃ!?とんでもねえ男だな、そいつは。

今すぐお前の家に連れていけ!俺がぶん殴ってやる!」


私の話を聞き終わったその人はひどく激怒して

私の腕をひっつかんで案内しろといきり立った。


「ちょ、ちょっと待って!私、家には帰らない。もうあいつには二度と会いたくないんだ。」


「んな甘い事言ってるからナメられんだぞ!家に帰れなかったら、お前どうする気だよ?」


「それは……」


「わかった。じゃあお前の母ちゃんに会わせろ。お前が言えないなら俺が説明してやる。」


「それもダメ!だってお母さんに言ったら…私、きっと施設に入れられちゃうよ…」


ぐすんと涙ぐんだ私に、その人は怒って言った。


「バカ!どこの世界に娘より男を取る母親がいるかよ!お前を守ってくれるに決まってんだろ!」


「そんな母親、実際どこにでもいるよ!お兄さんはまともな家庭で育ったから知らないだけだよ!」


「ウルセー!いいからお前の母ちゃんの所に連れて行けよ。」


「お母さん、繁華街にあるクラブでホステスしてるの。仕事が終わるのは1時過ぎだもん。今行っても会えないよ。」


「1時……」


その人は腕時計を確認して、しばらく何か考え込んでいたけれど


「わかった。1時まで俺と一緒に待ってろ。そんで母ちゃん連れてくるから、お前もちゃんと言うんだぞ?わかったな?」


「え、だって最終に乗らなきゃいけないんでしょ?明日大事な試験なんだよね。無理じゃん。」


「……その事はもういい。お前が心配することじゃねえ。よし、1時まで時間つぶすぞ、来いよ。」


そうしてその人は私をタクシーに乗せて繁華街の外れにある知り合いがやっている小さなバーへ連れて行って


人目に触れない様にそこの個室を借りてマスターが作った多国籍料理みたいなものを食べさせてくれて


そしてクラブが終わる時間、母親に電話をかけてバーに呼び出してくれたんだ。

 
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