弁護士先生と恋する事務員
「誰だ?」
みんなの注目を集める中、ドアの横から顔を見せたのは先生の小中学校時代の同級生、雅美(まさみ)さんだった。
雅美さんはこの近くのパブスナックでママさんをやっている。
「雅美か。どうした、入って来いよ。」
「営業時間過ぎてるはずだけど電気点いてるからいるのかなーと思って覗いてみたら…皆さんそろって何してるの?宴会?」
「まあそんなもんだ。お前も食っていけ、ウマいぞ。」
それじゃ、おじゃましまーす、と言いながら入ってきた雅美さんは、先生の斜め向かいに椅子を持ってきて座った。
「コウちゃんにお願いがあるのよー。またうちのお客さんに相談されちゃってさあ…」
雅美さんはとりあえず枝豆を齧りながら、先生に相談を始めた。
お店の常連さんが、お金の貸し借りでトラブルを抱えているらしい。
「知り合いの弁護士紹介して欲しいって。コウちゃんの事紹介させてもらっていいわよね?」
「ああ、いいぞ。」
「良かったぁー。よろしくね。」
こうやって、知り合いから依頼を受けることは度々ある。
一度仕事を受けた依頼者が先生の人柄を気に入って、他の依頼者を紹介してくれたりして…
この町で事務所を開いて三年。
そんな風に知り合いの輪がどんどん広がって、今ではすっかり町の人に頼られる存在になりつつあるようだ。
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仕事の話が一段落すると、また雑談に戻った。
剣淵先生にすっかり一目ぼれしたらしいソニアさんが、先生の幼馴染の雅美さんに根掘り葉掘り聞き出した。
「ねえ、コータロー先生はこんなにかっこいいのに、どうして結婚しないんですかぁ?やっぱりモテるから遊びまくってるとか?」
ドキリと心臓が鳴る。
確かに、どうして先生は独身なんだろう。
今まで、いくらでも相手はいただろうに。
「子供の頃からモテてたわよ、コウちゃんは。遊びまくってるかどうかは知らないけど、なにしろこの性格だから。『人類皆兄弟』みたいな感じなんじゃない?」
「ふうーん。博愛主義って事ですか?」
「そうだと思うなあ。」
雅美さんとソニアさんとの間で、先生が結婚をしない理由の結論が出たようだ。
「じゃあソニア、先生の結婚相手に立候補するー!そろそろ落ち着いてもいい頃でしょ、先生?」
ソニアさんが先生の口にマグロの刺身を運びながら、かわいらしくそう言った。