弁護士先生と恋する事務員


「誰だ?」


みんなの注目を集める中、ドアの横から顔を見せたのは先生の小中学校時代の同級生、雅美(まさみ)さんだった。

雅美さんはこの近くのパブスナックでママさんをやっている。


「雅美か。どうした、入って来いよ。」

「営業時間過ぎてるはずだけど電気点いてるからいるのかなーと思って覗いてみたら…皆さんそろって何してるの?宴会?」

「まあそんなもんだ。お前も食っていけ、ウマいぞ。」


それじゃ、おじゃましまーす、と言いながら入ってきた雅美さんは、先生の斜め向かいに椅子を持ってきて座った。


「コウちゃんにお願いがあるのよー。またうちのお客さんに相談されちゃってさあ…」


雅美さんはとりあえず枝豆を齧りながら、先生に相談を始めた。

お店の常連さんが、お金の貸し借りでトラブルを抱えているらしい。


「知り合いの弁護士紹介して欲しいって。コウちゃんの事紹介させてもらっていいわよね?」

「ああ、いいぞ。」

「良かったぁー。よろしくね。」


こうやって、知り合いから依頼を受けることは度々ある。


一度仕事を受けた依頼者が先生の人柄を気に入って、他の依頼者を紹介してくれたりして…


この町で事務所を開いて三年。

そんな風に知り合いの輪がどんどん広がって、今ではすっかり町の人に頼られる存在になりつつあるようだ。


~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*


仕事の話が一段落すると、また雑談に戻った。

剣淵先生にすっかり一目ぼれしたらしいソニアさんが、先生の幼馴染の雅美さんに根掘り葉掘り聞き出した。


「ねえ、コータロー先生はこんなにかっこいいのに、どうして結婚しないんですかぁ?やっぱりモテるから遊びまくってるとか?」


ドキリと心臓が鳴る。

確かに、どうして先生は独身なんだろう。
今まで、いくらでも相手はいただろうに。


「子供の頃からモテてたわよ、コウちゃんは。遊びまくってるかどうかは知らないけど、なにしろこの性格だから。『人類皆兄弟』みたいな感じなんじゃない?」

「ふうーん。博愛主義って事ですか?」

「そうだと思うなあ。」


雅美さんとソニアさんとの間で、先生が結婚をしない理由の結論が出たようだ。


「じゃあソニア、先生の結婚相手に立候補するー!そろそろ落ち着いてもいい頃でしょ、先生?」


ソニアさんが先生の口にマグロの刺身を運びながら、かわいらしくそう言った。
 
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