白紙撤回(仮
それから俺は市ヶ谷の工房をじっくり見て回り、説明を受けた。
どうやらこの工房のホームページがあり、そこからラブドールのオーダーを受け、発送しているようだ。

素材はシリコン。
骨格なるものがあるので関節で曲げてポージングが出来る。
生首(ヘッド)ボディ、ウィッグ、それぞれ何パターンかあり組み合わせは自由。

オプションで指の関節や爪、細かい注文を受け、オーダーメイドもたまに受ける。
俺が見た顔の潰れた人形もオプションだったようだ。

一通り仕事の内容を話してから市ヶ谷は俺に質問を始めた。

「山科君、スプレーアートとかやったことある?」

「いや……ない」

「手先は器用な方?」

「……自信はない」

「……作業中はマスクするけど塗料とかの匂い大丈夫?」

「たぶん……」

「山科君、やる気ある?」

「あるわ!てか、今さら面接か!?」

市ヶ谷はしばらく黙って口を開いた。

「……とりあえず簡単な作業から始めようか」

「あ?ホームページの製作、管理とかか?」

「出来るの?」

「コーディングとか画像レイアウトとかだろ?多少なら出来るよ」

「へぇ……君にそんなスキルがあったとはね……」

「貶してるのか誉めてんのかどっちだよ……」

「勿論、後者だよ。そろそろホームページ更新しようと思ってたんだ。手が飽いたらドール制作も手伝って貰うけどとりあえずそっちをお願いしてもいいかな?」

「わかった。精一杯やらせていただきます」

工房を出ると外は薄暗くなり初めていた。
一緒に駅まで向かう途中、俺は市ヶ谷に尋ねた。
< 32 / 46 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop