白紙撤回(仮
その後、俺は華に一から現在の状況を説明をするはめになった。
借金は付き合い当初から華も知っていた事だが、とうとう首が回らずヤミ金に手を出したこと。川に落ちて市ヶ谷に助けられたこと。
市ヶ谷がアシスタントを条件に借金を一括返済してくれたこと。
さすがにラブドール制作の仕事とは言えなかったが、とにかく現在の状況を話した。

華は眉間に皺を寄せて俺の話に耳を傾けていた。
最後まで話を聞くとようやく口を開いた。

「その人、本当に大丈夫なの?普通、知らない奴の借金なんて払わないじゃん!」

「……だから、借りただけで返すんだって」

「いや、まず貸さないでしょ!?騙されてない?」

「騙しようがないだろ。何を騙すんだよ」

「そんなの……わかんないけど。ありえないじゃない?普通、他人に三百万も払う!?」

「普通じゃないんだろ」

俺の落ち着いた態度に華は少しイライラしているようだ。
眉間に皺を残してむくれたまま黙ってしまった。
華の言うことも分かる。俺だってその事を不振に思った。

「……考えても仕方ないだろ。市ヶ谷のおかげで助かったんだし今は素直に感謝して真面目に働いてるよ」

「ねぇ……その人の家に住むの?」

「家じゃない。仕事場の空いてる部屋を借りる」

「……その人、女の人じゃないよね?」

「男だよ。男。てか、お前に関係ないだろ?俺、飯食うから」

コンビニの弁当に箸をつけると華はむくれたまま再び黙ってしまった。
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