他人格的適合者(タジンカクテキテキゴウシャ)『短編』
「馬鹿な…あり得ない…」

贅沢な調度品に囲まれ、最高級の素材を使ったソファや、椅子。

その中で、校長である溝口源三郎は、全身をわなわなと震わせていた。

「ニャンコの助け団が…数分で、全滅だと!」


贅沢三昧の部屋ではあるが…すべてのものが、傷だらけであった。


「彼らの程の…者が…」

ソファの向こう…一枚板でできた机を、激しく叩いた。

勿論、机も傷だらけだ。


「本当なのかね!猫田教頭」

溝口は、目の前に立つ女にきいた。

「間違いありません」

きっぱりと言い切った女は、スーツ姿の猫沢だった。

猫沢は、眼鏡を人差し指で上げ、

「いかが…致しましょうか?」

じっと溝口の様子を伺う。

「もっと凄い殺し屋を、雇うしかあるまい」

苦々しく、顔をしかめる溝口の表情が変わり、

笑顔になると、しゃがみ込んだ。

「どうした?我がお姫様…マリーアントワネット」

足元に擦り寄ってきたペルシャ猫を、溝口が抱き上げた。


溝口は、部類の猫好きだ。

数十匹の猫が、校長室に、放し飼いにされていた。

溝口は、マリーアントワネットを抱き締め、頭を撫でながら、

「この学校で、一番のお姫様は、この子達だ!あんな生意気な小娘の好きには、させん!」

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