たなごころ―[Berry's版(改)]
組んだ膝の上で両手を組んだ喜多は、笑実の返答に満足げに何度も頷く。
「猪俣さん。依頼料の変わりに、ここでアルバイトして頂くと言うのはどうでしょうか?」
「探偵事務所でですか?」
「いえいえ、1階の店舗です。下は箕浪がひとりでこなしているのですが、彼が人手を欲しがっていまして。この一件が終わるまでの間で構いません。もちろん、お仕事に支障をきたさない範囲内で。――いかがですか?」
喜多との視線を逸らすことなく。笑実は心を決める。
笑実は、喜多へ右手を差し出した。承知したように。喜多はその手に自身の胸ポケットから取り出した万年筆を乗せた。ズシリと重みのあるそれ。大きな深呼吸を、ひとつ。目の前に置かれている書類に、笑実は氏名を書く。緊張からなのか、期待からなのか。書面に書かれたそれが、やけに大きいのを認め、笑実の顔にこの場に来て初めての笑みが零れた。
「では、契約成立ですね。よろしくおねがいします」
「こちらこそ、よろしくおねがいします」
「猪俣さん。依頼料の変わりに、ここでアルバイトして頂くと言うのはどうでしょうか?」
「探偵事務所でですか?」
「いえいえ、1階の店舗です。下は箕浪がひとりでこなしているのですが、彼が人手を欲しがっていまして。この一件が終わるまでの間で構いません。もちろん、お仕事に支障をきたさない範囲内で。――いかがですか?」
喜多との視線を逸らすことなく。笑実は心を決める。
笑実は、喜多へ右手を差し出した。承知したように。喜多はその手に自身の胸ポケットから取り出した万年筆を乗せた。ズシリと重みのあるそれ。大きな深呼吸を、ひとつ。目の前に置かれている書類に、笑実は氏名を書く。緊張からなのか、期待からなのか。書面に書かれたそれが、やけに大きいのを認め、笑実の顔にこの場に来て初めての笑みが零れた。
「では、契約成立ですね。よろしくおねがいします」
「こちらこそ、よろしくおねがいします」