たなごころ―[Berry's版(改)]
「あの、ひとつお聞きしますが。ここが探偵事務所なんですよね?喜多さんと、箕浪さんが探偵で」
「はい、ここを拠点地として、探偵活動を行っています。私と箕浪とふたりで」
「そうなんですね……。でも、この事務所って不思議ですよね。表に看板もないですし。入り口も1階の店舗からしか入れないようになっていて」
「そこが我が事務所の特徴でもあります。箕浪のこだわりでもあるんですけれど。ここまで辿り着くことの出来た方だけの依頼を受ける。
とある小説に書かれていたそうですが。名探偵には名探偵に相応しい事件があるそうです。おいそれと、何でも事件を簡単には引き受けないことが、名探偵の証でもあると。実際問題、私どもが名探偵と言える存在なのかは、また別問題ですけれどね」
「……なるほど」

 納得できたわけではないけれども。これ以上の追求をする気にもなれず、笑実は首を縦に振っていた。

< 29 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop