たなごころ―[Berry's版(改)]
鋭い音を響かせ、笑実は慌てて扉を閉める。世話しなく鳴り響く心臓の真上にあたる胸に掌を当て、笑実はただすりガラスの引き戸を眺めていた。
※※※※※※
レジの置かれたカウンター内にある丸椅子に腰を下ろし、笑実は中の様子を伺っていた。来客はもちろんない。どうすべきか逡巡し始めたころ。不意に、引き戸が開き、ようやく箕浪が姿を現せた。笑実は慌てて立ち上がり、頭を下げる。
「さっきは、すみませんでした」
「……あんた、何の用」
「アルバイトに来ました。昨日の喜多さんとの契約で。依頼料の代わりにと」
「本当に来たのかよ。言っておくけれど、あんたに頼むことは何もない。俺は認めてないから」
「でも……」
笑実の返答を聞かず、箕浪は小上がりから降り、隣にあるドアを開け2階へ姿を消そうとする。2・3歩、その場で足踏みをしてから、笑実も箕浪の後を追った。
2階にある事務所へのドアを開けると、そこには箕浪の姿はもちろん喜多の姿も見つけられなかった。小さな音と共にドアが閉まり、笑実は室内へ数歩足を進める。ここに、姿がないとすれば――。ガラスの壁で仕切らている隣の部屋へいるのだろう。静かに、そちらの方まで笑実が歩み寄ると。
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レジの置かれたカウンター内にある丸椅子に腰を下ろし、笑実は中の様子を伺っていた。来客はもちろんない。どうすべきか逡巡し始めたころ。不意に、引き戸が開き、ようやく箕浪が姿を現せた。笑実は慌てて立ち上がり、頭を下げる。
「さっきは、すみませんでした」
「……あんた、何の用」
「アルバイトに来ました。昨日の喜多さんとの契約で。依頼料の代わりにと」
「本当に来たのかよ。言っておくけれど、あんたに頼むことは何もない。俺は認めてないから」
「でも……」
笑実の返答を聞かず、箕浪は小上がりから降り、隣にあるドアを開け2階へ姿を消そうとする。2・3歩、その場で足踏みをしてから、笑実も箕浪の後を追った。
2階にある事務所へのドアを開けると、そこには箕浪の姿はもちろん喜多の姿も見つけられなかった。小さな音と共にドアが閉まり、笑実は室内へ数歩足を進める。ここに、姿がないとすれば――。ガラスの壁で仕切らている隣の部屋へいるのだろう。静かに、そちらの方まで笑実が歩み寄ると。