たなごころ―[Berry's版(改)]
「『復讐』の契約をしたのは、探偵事務所とですが。このアルバイトの契約を交わしたのは喜多さんとです。言わば、このアルバイトでの上司は喜多さんであって、彼が必要だと。私で全うできる仕事だと判断したうえでの契約だと私は判断しています。ですから。喜多さんが来なくていいと言うまで、私は通わせていただきますので」

 部屋を後にしようとする笑実を、箕浪は慌てて追いかける。

「おい、あんた!ちょっと待てよ」
「ひとつ言わせていただきます。私の名前は『あんた』ではありません。『猪俣 笑実』です。名前で呼んでいただけなければ、今後一切返事はしませんので。では」

 箕浪の鼻先で、大きな音と共にドアが閉まる。笑実の態度に、箕浪は言葉を返すことが出来ず、ただその場に立ち尽くしていたのだった。

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