たなごころ―[Berry's版(改)]
「だ、大丈夫ですか!?」

 視線を向ければ。箕浪は耳までも赤く染めている。

「おま、っ。女が、無闇に男の髪に触るな!」
「……そんな、別にいいじゃないですか。近くに寄ってきたのは箕波さんなんですし」
「助けてやったお礼も言わずに口答えか!」
「……子供みたいなことを、また」

 箕浪からの鋭い視線を感じ、笑実はわざと天井へと視線を逸らす。ふたりとも、床に腰を下ろしたままに。

「猪俣笑実。いくつだよ。言ってみろ」
「30歳ですけど」
「俺より4歳も年下だろう!年上を敬えよ!」
「……そんな発想が子供だって言うんです」
「なっ!」

「何、こんな狭いところで。ふたりで見つめ合ってるの」

 いつ現れたのか。姿を見せた喜多が楽しげに眸を細め、ふたりに問う。

「随分と仲良くなって。お邪魔だったかな?」
「「冗談じゃない!」です」

 声の揃ったふたりに。喜多はさらに、声を上げ笑い始めたのだった。

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