狂奏曲~コンチェルト~
「俺は、かなめの笑顔を奪ってしまいそうで怖い」
「え……?」
哀しそうにそう呟いて、翼君は私に背を向けた。
「翼君っ」
私が声をかけると、やっぱり翼君は止まってくれる。
「翼君は、私が笑顔でいたら、笑ってくれる?」
翼君は、驚いたように私を振り返った。
あの綺麗な灰色の瞳が、揺らいでいる。
「私、けっこうしつこいから、翼君がお礼をさせてくれるまで、押しかけるよ」
私が笑いながらそう言うと、翼君はため息をついた。
「お礼させてくれる?」
「……わかった」
私は満面の笑みを翼君に向けた。それを見た翼君が目を見張る。
そして、翼君は微笑んだ。
「かなめのその笑顔が見れただけで、十分お礼になるんだけど」
「そんなこと言わないで」
私は翼君に歩み寄った。
「翼君、行きたいところ、きちんと決めておいてね!」
「……ああ」
「それじゃあ」
私は手を振って、翼君とその場で別れた。