狂奏曲~コンチェルト~
綺麗な瞳に、私が映る。
心臓が馬鹿みたいに鳴る。
「夢なら、覚めないでほしい」
そんなふうに翼君が私を想ってくれることが嬉しくてたまらない。
私は、この人の愛を全部受け止めたい。
「夢じゃないよ」
私は翼君の手を握った。
ふと、冴島さんの声が頭をよぎる。
親しげに『翼』と呼ぶ彼女の声が。
私だって、もっと翼君に近づきたい。
「夢じゃない。私は翼君の……翼の隣にいるよ」
私が翼って呼んだら、翼君、いや翼は驚いたように目を見張って微笑んでくれた。
「翼って呼ぶの、変かな? でも、そう呼びたいな」
翼の笑顔が、私を幸せにするって、気づいているかな?
どうしてだろう、どうして、こんなにも安心するんだろう。
繋いだ手から伝わる温もりが、綺麗な灰色の目から伝わる視線が、全てが私を捕らえる。
懐かしいような安心感が心地よくて、身を任せたくなる。
でも、翼は知らない。
私がかつて、中学生の頃、汚されたこと。
翼の手を握る手に力が入った。
手に入れたばかりの安心感。
でも私が以前強姦に遭った事があるだなんて、翼はどう思うんだろう。
そしてはっとする。
翼が、お兄ちゃんの親友だったら、私に起こったことを知ってるんじゃないってことに。
私がいつもは全く思い出しもしない過去。
だけど、なぜか翼といるとそのことを考えてしまう。
今まで感じていた空虚な気持ちが満たされるような感覚とともに湧き上がる言いようのない不安のような気持ち。