狂奏曲~コンチェルト~

「かなめ、なんか強くなったね」
「そう?」
「うん」

 私もつられて微笑んだ。

 余計なことは考えなくていいと、翼は言ってくれた。
 だから、私は覚えていない過去という不安を捨てることにしたんだ。

 以前抱えていた空虚な気持ち。
 だけど、それは翼といることでなぜか満たされるような気がした。

 懐かしさにも似た安心感。
 心がほんわりと暖かくなる気持ち。

 翼になら、私は何もかもを任せられるような気がしていた。



『悪い、急に店長に呼ばれた。翼とでも帰ってくれ』

 お兄ちゃんからのそんなメールが入ったのは、授業が終わってからだった。
 翼にメールをすると、

『授業終わるまで少しかかるけど、どうする?』
『それじゃあ待ってる』
『わかった』

 私は工学部の入り口にあるベンチのところで座って待つことにした。
 しばらくぼーっとして待っていると、翼と冴島さんが一緒に出てきた。
 ずきんと心が痛む。
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