狂奏曲~コンチェルト~

「こんにちは、本郷さん」
「こんにちは。翼!」

 私が冴島さんに挨拶を返してから声をかけると、翼はにこりと笑って私の隣に来てくれた。それに言いようのない安心感を覚える。
 翼は私のもの。
 そんな醜い独占欲が出る。
 冴島さんは、じっと私達を見ていた。
 その心のうちを知ることはできない。

「良かったね、翼」

 と、冴島さんが笑いかけてきた。
 私は驚いて彼女を見た。
 彼女は、翼だけを見ていた。まるで私なんか視界に入れたくないとでもいうように。

「知ってる、本郷さん?翼、ずっとずっと貴女のこと好きだったのよ」
「おい、ほのか……」

 私のことなんかまるで見ないで、私に話しかける冴島さん。

「おめでとう、翼。それじゃあね」

 そうやって棘のある声で去っていく彼女は、どこか寂しそうに見えた。

「……あいつのことは気にするな」
「うん……」

 ずきっ

「いっ……」


 彼の視線の向こうには、彼女がいる。
 男子にも人気がある、素敵な彼女。
 彼はいつも、彼女と一緒にいる。
 彼は私に背中を向けていて気づかない。
 彼女は彼に気づかれぬように、私を睨みつけてきた。

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