狂奏曲~コンチェルト~

「翼な、かなに会ってからもずっと悩んでた」
「え……」

 その言葉に、心臓がつかまれたような衝撃を受ける。

「あいつな、お前があのことを忘れたことは良いって言ってた。思い出して欲しくないって」
「つばちゃん……」

 お兄ちゃんは苦しそうに、

「あいつ、自分を責めて、責めて……それでもかなのことが好きだって」

 見開かれた私の目から、ぽろりと、一筋の涙が零れ落ちた。

「かながあいつのこと恨んでるだろうって。思い出したら、もう近くにはいられないって」
「そんな……っ」
「お前に彼氏がいるって知ってても、お前が笑顔を失ってないって喜んでた。自分があんな表情してて、良くそんなこと言えるって思ったよ。あんな、空っぽの顔で」

 再会したときのつばちゃんは、何もかもをあきらめたような、疲れきった顔をしていた。

「俺は、かなはあいつを責めてないって何度も言ったのに、あいつは信じなくてな」
「…………」

 お兄ちゃんは切ない笑顔で、

「かな、お前の口で言ってやってくれ。もう、自分を責めなくて良いって。俺の言葉じゃ、あいつは聞いてくれないから」
「うんっ!」

 お兄ちゃんの言葉に、私は力強く頷いた。

 一刻も早く、つばちゃんを解放してあげなくちゃ。

 そう思った私は、お兄ちゃんと一緒に帰路についた。


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