シュガーレスキス
 柔らかい胸の感触にうっとりし、僕が求めていた暖かい抱擁が今実現しているんだという感覚になった。

「僕……自分の心を確認しないまま行動してしまってるんですが」

 さすがに少し罪悪感が沸いて、動きを止めた。
 すると、課長は“それでいい”と言った。

「本当に人を好きになるとね、自分の事より相手の気持ちを考えるようになるのよ。今は私……八木くんが心から安心してもらえたらいいなって思ってるの」

「課長……」

「けっして自分の体を粗末にしてる意識はないのよ。だって、好きな人に肌を触れてもらえるだけで今は幸せだから」

 初めて聞く僕を心から思ってくれる人の言葉だった。
 気取らなくても、あんな駄目な部分を全部知られている課長の前で、僕は全てを許されていた。

 彼女を抱きながら、僕は初めて人を好きになるという感覚を体で理解した。
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