シュガーレスキス
 聡彦はガクッと肩を落として、そのまま布団にゴロンと寝てしまった。

「怒った?聡彦……」
「いや。菜恵をその気にさせられない俺が悪いんだろ……きっと」

 聡彦らしくない自虐的なセリフ。相当傷ついたのかな。

「違うと思う。私が臆病すぎるんだ……」

 色々謝ろうと思ったけど、聡彦はもう今日は積極的になる気は無いみたいだった。

「ごめんね」
「菜恵が謝る事無いだろ」

 さすがに私が泣いて謝っているのを見て、聡彦も表情を和らげた。
 暖かい彼の胸にスポッと抱き入れられ、さっきの恐怖心は消えていった。

 どうして抱き合うだけでは駄目なんだろう。
 私はこうしているだけで満足なのに……男の人って不便に出来てるんだな。

「ちょっと焦ってんだ……俺」

 聡彦がそうつぶやいた。

「焦る?もう八木さんとの事は解決したし……何を焦る必要があるの?」

 私は不思議に思って彼の顔を見上げた。

「何でもない。もう寝よう……おやすみ」

 そう言ったきり彼は言葉を切って目をつむってしまった。
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