シュガーレスキス
「後藤さん!」

 病院が連絡をしてくれたみたいで、如月さんが汗をかくほど急いで駆けつけてくれた。
 彼が私と子供の命を救ってくれた。
 感謝してもしきれない……。

「如月さん。ありがとう……。私、一人で産みます。この子が生きたいって言ってるんです。だから……もう迷いません」

 ハッキリとそう言った私の顔を見て、彼はちょっとガッカリした顔をした。

「……そっか。そうだよな。好きでもない男と結婚なんか出来ないよな」
「いえ、あなたの事は多分ある意味聡彦より尊敬してます。ただ、この子はやっぱり聡彦との子供なんです。だから……彼の記憶が戻るまで、私が一人で育てます」

 何を迷っていたんだろうかと思うほど、私の心には力が戻っていた。
 仕事は辞めてもいいだろう。
 きっと子供を育てながら生きる手段があるはずだ。

 私がそう強く思っていたら、如月さんはその気持ちを揺るがすような事を言い出した。

「後藤さん。俺が今からする事……怒らないで欲しい。俺が君を本気で思ってるからこそする行動だ」

 今までに無いほど真剣な顔でそう言って、彼は私の目をじっと見た。

「何を……する気ですか」
「舘さんに全てを告げてくる。それで、君を全力でカバーするように説得してくるよ」

 それを聞いて、私は慌てた。
 聡彦にはまだ言う時期じゃない。
 こんな私を知ったって、彼は苦しむだけだ。
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