シュガーレスキス
「止めて!お願い。聡彦には知られたくない」
「黙ってられるかよ!」

 唐突に如月さんの語気が荒くなった。

「嘘をつくのも美学だろうさ。そりゃあ……そういう美しい嘘も存在するのは分かる。でも、今回ばっかりは後藤さんがつこうとしている嘘を認める訳にいかない。男だって責任はフィフティなんだ。舘さんにだって君と同じか、それ以上のつらさを感じる責任はあるんだよ。俺を恨むならそうすればいい……もう君の嘘つきごっこに付き合うのは止めた」

 私の言葉なんかもう耳に入れない調子で、如月さんは病室を出て行ってしまった。

 聡彦に……知られる。
 一生嘘をつきつづける覚悟もしてたのに。

 でも、如月さんの事を責める気にもなれない。
 どれだけ私を思ってくれたのか、体からそれを直接感じる事が出来た。
 あの人は……人間を心から愛せる人なんだ。

 お腹の子が助かった事。
 如月さんが本気で私を思ってくれた事。

 そして……今から聡彦に、この事実が知られる事。

 その全てが迷路のように迷い歩いていた私を、一つの出口へと導いてくれようとしている。
 結末がどうなるかなんて分からない。
 ただハッキリ言えるのは、どんな事があっても私はこの子を産むという事だ。

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