シュガーレスキス

1-6 告白(SIDE聡彦)

SIDE聡彦

 自分の記憶が欠落しているという実感が沸いたのは、自分のアパートに戻った時だった。
 フワッと花の香りがして、いつも自分が使ってる部屋じゃない匂いがする。
 それに、趣味じゃない絵とか女性の洋服がハンガーにかかっていて……明らかに誰かと一緒に生活をしていたという感じだ。

「俺、本当に後藤さんと付き合ってたのか」

 独り言を言って、部屋の色々な部分を確認する。
 当然のように歯ブラシも2本で、洗顔料とか女性用の下着入れなんかもしっかり用意されていた。
 これだけの関係って事は、きっと俺達は相当深い関係だったに違いない。
 
 何で何も覚えてないんだ?
 いくら脳に衝撃を受けたからって、こんなに好きだったはずの女性を忘れるなんて……。

 俺が後藤さんを覚えて無かったせいで、彼女は泣きそうなほど悲しい顔をしていた。
 新しい受付嬢で、美人だと聞いていたから一度偵察に行ったのは覚えている。
 それで、ポヤンとしてて何となく放っておけないタイプの子だな……とは思った。

 俺の記憶はそこまでだ。

 あれからいったい何がきっかけで、俺達は付き合う事になったんだ?
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