シュガーレスキス

1-4 思い出の箱(SIDE聡彦)


SIDE聡彦

 何をしてやれるってほどのものは無かったけれど、菜恵の心と体を守る事を際優先に生活する覚悟を新たにした。
 さらに、菜恵との記憶を取り戻し、会社での自分の立場も数年前とは違うのだというのが実感として沸いてきた。

 スーツを着替えて社内に戻ると、沢村さんが仕事の続きを指示待ちしていた。

「お戻りになって良かったです、次の作業はどうしましょうか」
「あ、ごめん。次の仕事はリーダーから直に指示してもらってくれる?ここまでの作業で俺が担当していた部分は終わりだから」

「え、そうなんですか?」

 何故か沢村さんの顔色が変化する。
 作業のおおまかな計画表は渡してあったから、それを見ればだいたい察しがつくはずなんだけどな……と思いつつ、もう一度作業の工程を教えた。

「分かりました」

 俺が直接の担当から外れるという事を面白くなく思っているのか、沢村さんの表情は険しくなっている。

「沢村さん、何か俺に不満でもあった?」
「いえ……別に」

 若い子のご機嫌取りは好きじゃないし面倒だ。だから俺は、もうこれ以上の詮索はしなかった。
 すると、彼女は社内メールでダイレクトに個人的に会って欲しいとの意志を送ってきた。


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