シュガーレスキス
『舘様
 先ほどは急に担当を外れられると聞き、動揺してしまいました。
 個人的にお話ししたい事があるのですが、お仕事が終わった後、少し外で会っていただけませんか?今日でなくてもいいので……。沢村』

 今まで気のせいかなと思っていた、沢村さんの気持ちの動きを確認し、俺は何だか嫌な予感がした。
 菜恵が不安定になった背景を色々考えていて、一度だけ病院に沢村さんがお見舞いに行ったとの情報を聞いたのを思い出す。
 二人の間にどんな会話があったんだろうか。

 沢村さんには、その日の仕事上がりに少し話せると答えた。
 特に彼女を追い詰めようという気持ちは無かったけれど、一応俺の中にあるモヤモヤを片付けたいと思ったからだ。



「さっきはどうも」

 会議室への移動途中、如月とすれ違った。
 トゲトゲしたものは消えていて、いつもの半分ふざけてるような顔だ。

「……どうも」
「後藤さんにはあの後会いました?」

 猛烈な夕立だったのに、俺が全く濡れた気配が無いのを見て察しはついてるみたいだった。

「ええ。記憶も断片的に思い出しました。もうご心配かけませんので」

 それだけ言って立ち去ろうとすると、奴は俺の腕をグッとつかみ、最後にもう一言付け足した。

「早く公式に発表して、俺が二度と近づけないほど遠くに彼女を連れていってくれませんか」

 そうしないとまた菜恵にアプローチしてしまいそうだ……と言いたいニュアンスを感じる。

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