シュガーレスキス
 一応流産の危険を脱したという事で、今までより精神的にも体力面でもリラックスして過ごして下さいと言われた。

「あまりにも怖がって動く必要はありません。ゆっくり長く散歩したりするのもいい運動ですからね。積極的に体を動かして下さい」

「はい」

 私の代わりに、何故か聡彦が先生の言葉に対して返事をしている。
 何が写っているのか分からないエコー写真を聡彦が欲しがるから、私はそれを普通に彼にあげた。

「どうするの?」
「日記に張る」

 彼は記憶を失う前につけていた日記の続きを、まだ律儀につけているみたいだ。

「菜恵のご両親にも挨拶行かないとな。日程で都合のいい日を確認しといてよ」

 お互いの両親には結婚して子供が生まれる事は伝えてあったけれど、まだ二人で顔をそろえて挨拶をした事は無かったから、そういう事もこれからはしていかないといけない。

「うちは近いからいつでも大丈夫だけど。聡彦は新潟でしょう?行くのも来ていただくのも大変だよね」

 そう、聡彦は新潟の美味しいお米で育った人なのだ。

「ああ、弟に連絡してあいつの部屋に泊まれるようなら両親をこっちに呼ぶよ」
「でも、私も安定して来たし。もしよければ聡彦のふるさとが見たいなあ」
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