シュガーレスキス
 で、この日も私はいつもの居酒屋に呼び出されてしまったというわけ。
 改めて考えても、この関係はおかしい。
 彼は私への連絡は自由にしてくるくせに、私は彼に連絡してはいけない。

 そういうルールだ。

 で、彼の注文した事を私は忠実に実行しなければいけない。
 その注文は本当にささいな事だし、苦痛になるような事は無いんだけど、何しろ「命令」だから時々自分はいったい何なのかと思ってしまう。

「で、今日は何人の男と話した?」

 これは彼の最初に聞く質問だ。
 受付してるんだから、相当人数と私は会話するわけなんだけど、異性と何回言葉を交わしたのか忠実に答えなければいけない。
 その為に私は自分用に数をカウントするアイテムも持つようになった。

「今日は30人かな」

 そう言うと、聡彦は冷たい表情のままワインを黙って飲んだ。
 この沈黙が怖い。
 何で自分で質問しておいて、私が答えると怒ったみたいになるのか分からない。

「じゃあ、今日は30回だな」
「え、今日も?」
「何……やなの?」

 こう言われると、どう答えていいか分からない。

 嫌ではない。
 ていうか、相当快感を伴う。
 だから、30回もあの……彼のキスを受けられると思うと背筋に変な鳥肌が立つ。
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